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SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7

SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 というレンズ

SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 のレンズ構成

非常にシンプルな光学系で、正直これで写るのか不安なぐらいだ。昔の望遠レンズはだいたいこんな感じだが、この図を信じる限りにおいては、要素は4つしかないことになる。分解した感じでは、後群のうちの1枚は、もう少し分厚かったような気がする。Sankyo Koki KOMURA- 300mm F5 の場合は、メーカーカタログでは、要素が4つとされているが、分解すると5つあった。
ふと思ったのは、300mmのほうは,、Sankyo Koki だったのに対して、こちら500mmは、SANKYO KOHKI となっている。 このメーカー、表記に関しては、けっこう頻繁に変えているようだ。


SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7

このレンズもまた、300mm同様に、絞り羽は、16枚もある。絞っても、ほぼ綺麗な円を描いている。鏡筒は金属製で、この時代のレンズに言える事だが、ビルドクオリティは高い。
現在の中国製レンズでは、非常に絞り羽枚数が多い金属製のマニュアルフォーカスレンズが安価で多く出ているが、構成的に、この時代の日本のものに似ているとも思う。少し前までは、丁度この時代のようなレンズを作っていたという感じだろうか?そうなると、アマゾン等で安く売られている、500mm F8とかの4枚構成の中華望遠レンズも気になるというものだ。


余談 謎の中華レンズ

(2024/07/07 以下をポチってしまった・・アマゾンとかで、多く出回っているOEMだ。7000円ほどの安物とはいえ、同じ4枚構成のレンズならコーティングの進化も含め、流石に写ると思われ・・フードは付いていない感じだが、KOMURA- 300mm のものが付きそうである。この類のレンズに、フードは画質向上(維持)のためにも必須だと思う。書いている事が本当ならば、4群4枚で絞りはプリセットなので幾分操作はしやすそうだ。数年前から認知していたが、流石にゲテモノ臭が強くて手を出さなかった。興味を持ったのは、Komura- のせい。500mm F7 の情報を調べていたら出てきてしまったのだ。そして、こういうものが出てきた。Pre-set (Quantaray, Kimunor, Five Star, etc.) 500mm F8 これと同じものではないだろうか?Super Albina ブランドのものもある。情報を信じるならば、60年代から場所を変えながら製造が続いている、歴史ある現代のオールドレンズであり、完全に枯れた技術なだけあって安い。思うに、現代の安中華レンズ(このレンズは、韓国 Samuyang OEM疑惑があるが、定かではない少なくとも、Samyang銘とOpteka銘は、その可能性はあるが、本家が現在この値段で作れるのかは不明だ)と日本のオールドレンズは親和性が高い気がする。価格的にもライバルである。同等の技術で作られている事もある。ゲテモノ好きのぼくが、これを避けるべきではなかったとも思う。もう一つ、JINTU 420-800mm という望遠鏡のようなのもあるが、意外に人気があるようだ。ただ、手振れ補正を固定して使いたいので、電子接点の無いレンズであれば、単焦点のほうが使いやすい。こんなもので作品は作れないだろう?いや、ぼくの作品の多くはゲテモノによって作られている上に、今のところ全作品受賞中だ。最新機材も持っているが、なんというかモチベーションが何故か下がるのだ。「戦いは、機械力だけでするものではない」とデスラー総統も言ってた)

Pre-set Telephoto Lens 500mm F8 実際にはプリントも無く無銘である

2024/07/18 中国から到着したので撮影、こちらの設計は、やはり4群4枚で、構造的に、やはり Komura と同時代の設計だと感じた。無銘であることから、フォーラム同様 Pre-set Telephoto Lens 500mm F8 と呼ぶことにする。500mmとは思えない安価だが、思ったよりもずっと写真用レンズとして成り立っていた。一つ思ったのは、これの300mmを所有していた可能性がある。以下がそうだ。

Pre-set Telephoto Lens 300mm F5.6

同じような構造だが、こちらは日本製だ。60年代の設計だと思われる。そしてやはり無銘。ブランドは不明ということになる。写りはさほど良くなかったが、このレンズには致命的欠陥があって、後玉が謎の白濁をするのである。クモリというよりは劣化という感じのものだ。詳細を調べていくと、500mm F8も、過去のものは同じ欠陥を持っていたようだ。
ともかく、こういうレンズ(500mm F8)が、国を変え、今も作られている事は興味深い。
以下に記事を書いたので参照まで。

謎の中華超望遠レンズ Pre-set Telephoto Lens 500mm F8




話を戻す

分離した SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7

komura の話に戻ろう。
このレンズだが、非常に長いため、真ん中で分離することが可能だ。レンズの後ろ半分は、筒とピントリングだけでありる。この後ろには、L39スクリューマウントが付いていて、その後ろに、各社のアダプターを付ける感じだ。Leica Visoflex I (ライカビゾフレックス1型)用のフランジバックを持っている。このレンズを購入したときは、アダプターが付いていなかったため、300mm用に付いていた、M42マウントアダプターを付けている。
実のところ、重い現代のデジカメを付け、三脚に立てると、ヘリコイドに負荷がかかり、ピントリングが重くなる。


とりあえず撮影でも

PENTAX K-1 に取り付けた SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7

太いわけではないが、とても長い。そして、レンズ群が、レンズ前方に集中しているため、非常にフロントヘビーだ。正直、そのF7という暗さもあり手持ち撮影は困難を極めるだろう。
写りに関しては、かなり昔の超望遠レンズであり、正直期待していないが、海外では、好意的なレビューもあり、評価している人もいる感じだ。

以下の写真以降の作例はクリックすると等倍鑑賞可能

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PENTAX K-1 / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F11)

開放値がF7なこともあり、一段少々絞ったF11で撮影してみた。全体感としては悪くないと思うが、F11では、まだ緩い感じの絵になる。オールドレンズの特徴だが、絞り開放から解像するレンズは少ない。普通は、二段ぐらい絞って解像し始めるものが多いと思う。そうなると、このレンズもF16からになるのだろうか?ただ、それだと、デジタルカメラでは、回折現象による、小絞りボケが発生するかもしれない。
一つ非常に気になる点だが、四隅を見てほしい。何かにケラれている。フードを取っても解消しなかったので、レンズ前玉のサイズそのものが足りないのか、フィルターの縁が写っているのか、それともM42マウントの口径が足りていないのか?処理で直るとは思うが、設計段階のミスとも思える。



一応、参考までに絞り開放と絞った様子

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PENTAX K-1 / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F7)

絞り開放、F7での撮影。正直、無限遠が出ていないのではないか?とすら思ったが、無限遠での撮影であり、黒い線を見てみると、一応ピントが合っていることが分かる。それ以外の、やや明るい部分は、ほぼ滲んでいる感じだ。軸上色収差、倍率色収差等の影響で、色が色々な方向に散っていて、正直どうなっているのか分からない。当時の技術で、500mmは、なかなか難しいものがあったようだが、それでも、このKomura- は写るほうらしい。ただ、知っている限りにおいては、Takumar 500mm F4.5 という大口径レンズは遥かに写る気がする。


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PENTAX K-1 / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F16)

先ほど、F11では、絞りかたが足りないという感じだったので、一段絞ったF16で撮影。全体感としてはシャキッとしたが、これだと、300mmの望遠レンズをAPS-Cのカメラに取り付けたほうが解像していると思う。1辺のサイズを50%ぐらいにリサイズすると、見栄えの良い画質になることから900万画素、少々、つまりフルサイズで1000万画素ぐらいならば、けっこう解像感が出るかもしれない。そんなカメラは数少ないが、SONY α7sシリーズならばそこそこ良いのではないだろうか?1200万画素のフルサイズ機は、Nikon D700など、何種類かあったはずだ。それらのカメラは、回折限界も高い。



K_1N1596-1.jpg
PENTAX K-1 / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F22)

劇的に変わるわけではないが、このレンズ、F22だとより解像するようだ。少なくとも自分にはそう見える。正直、デジタルでは、完全に回折限界に達していると思われるが、レンズそのものの特性との折り合いとしては、F16、F22あたりが使いどころで、近接撮影ならば、F11も使いようかもしれない。



K_1N1611.jpg
PENTAX K-1 / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F11)

近いといっても、けっこう離れていたと思うが、手前の船の一部を撮影してみた。まぁ、ほどほどに絵にはなっている。



モノクロ

MONO1512.jpg
PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F11)

モノクロで、手持ちスナップにも挑戦してみた。
正直に申し上げると、レンズの自重により、ピントリングが上手く回らずピントを上手く合わせられない。当時、今のような手振れ補正は無く、三脚前提のレンズである事から、そういう点は致し方ない。あと、絞りはプリセットですらないことから、ピントそのものを合わせづらい。カメラを持たず、レンズそのものを持ってピント合わせをしたが上手くいかない。
しかし、ピント面に関して言えばそこそこ解像しているようにも見えなくもない。



MONO1528.jpg
PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SANKYO KOHKI Komura- 500mm F7 (F11)

この写真だと、文字が多くみられるので分かりやすいが、ピント面はほどほどに解像しているのが分かる。ただ、やはり手持ち撮影だと、思ったようにピントを合わせられない。街灯に合わせたかったが、ピントリングを上手く回せず適当な位置しかピンを合わせられなかった。ブレに関しては、意外なほど起こらないが、それは手振れ補正のおかげだろう。


感想

もう少し撮ってみないと分からないのと、ケラれを無くすためにフィルターを外さなければならないのか?という感じで、フィルター無しでの撮影も試してみなければならないかもしれない。L39ビゾフレックス用アダプターで、PENTAX 645システムで使ってみようかとも思ったが無理そうである。
Sankyo Koki KOMURA- 300mm F5 の評価が低めのものを多く見受けたのに対して、500㎜のほうは、好意的な評価が多かったことから、もしかしたら、500㎜という超望遠でありながら、300mmと同等、もしくは、それ以上の描写を期待したが、流石にそれは無かったという感じだ。300mmのほうが、設計に無理が無く、確実に良く写る。ただ、このレンズはかなり古く、設計は確か60年代であることを考えれば、けっこう良いのかもしれない。
正直、500mmという焦点距離を使う機会は少ない。使い道を考えてみるものの、最短撮影距離も長く、なかなか使いにくい。ぼくは、鳥も、ペットのインコぐらいしか撮らない。ただ、それだけに滅多に使わない焦点距離に、金額を注ぐのも何なので、こういったオールドレンズでたまに撮る程度というのならば使えるという感じだろう。
暇なときに、手持ちのスナップも試してみたいのと、色々と試したいので、またアップしようと思う。

2017年ごろまでアニメーション等の映像作家 その過酷さから病気に倒れ、限界を感じた事から、その後写真作家に転身 イメージフォーラム・フェスティバル、バンクーバー国際映画祭、オーバーハウゼン国際短編映画際、タンペレ映画祭、キヤノン写真新世紀 LensCulture 等で発表。 写真関連は、初の写真作品で、キヤノン写真新世紀2019年度グランプリ受賞。東京都写真美術館で個展、LensCulture Art Photography Awards 2022 LensCulture Emerging Talent Awards 2023 にて Jurors’ Picksなど NHK ドキュメント20min.「蟻(あり)と人間とぼく アーティスト・中村智道」で紹介される 尚、写真等の無断使用はお断りいたします。一言ご連絡ください。 お仕事のご相談など、気楽に、ご連絡ください。 e_mail:nakamura.tomomichi@gmail.com

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