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Auto-Takumar 55mm F2

Auto-Takumar 55mm F2 というレンズ

AUTO YASHINON 5cm F2 と Auto-Takumar 55mm F2

Auto-Takumar 55mm F2 といえば、いわゆる、当時の標準レンズのど真ん中にくるレンズで、普及グレードのレンズだが、この後に出る有名な、Super-Takumar シリーズのレンズとは、ちょっと異なるたたずまいだ。どちらかと言えば、写真の奥に写っている、AUTO YASHINON 5cm F2 とかに近いデザインになっている。というのも、このレンズ、富岡光学が作っていたとも言われている。個人的には納得するところもあり、絵の作り方や色が富岡的だと思う。富岡のレンズと言えば、名前だけで評価が上がるところもあるが、個人的には、この後に出てくる、Super-Takumar 55mm F2 いわゆる、黄文字の輸出バージョンの、安価なレンズのほうが優れていると思っている。同じ光学系かと思っていたが、比べるとレンズの大きさが違うように見える。鏡筒や絞り羽など、もちろん、劣化している部分もあるが、事、画質の均一性、隅の解像に関して言えば、Super のほうが、圧倒的に解像する。それどころか、Takumar 50mm F1.4などと比べても、F4までは少なくとも高性能とも言える。F5.6以降も、ほぼ同等の性能だ。それに対して、Auto のほうは、隅の解像では、かなり譲ることになる。だが、かといって、Autoが駄目というわけではなく、これはこれで、全体的な絵作りに関しては説得力があり、故に、こちらのほうが写りが良いという人も多いのだと思う。


光学的には、このような設計で、典型的な変形ダブルガウス型のレンズと言える。いわば、まったく珍しくないものだ。それだけに、画質の安定感には期待が持てるというものだ。



Auto-Takumar 55mm F2

このレンズの絞り羽は10枚あるので、これ以降のTakumar レンズよりも立派だ。全体のビルド品質は、この時代に言える事だが、金属製で、非常に高いレベルだ。



撮影

PENTAX K-3 Mark III Monochrome に Auto-Takumar 55mm F2 を取り付けた様子

このレンズの美点は、数値に現れない諧調や色にあって、その点は、以降のTakumarレンズに譲らないものがあると思う。そういった描写が分かりやすいのは、諧調のみを表すモノクロセンサーや、或いはフォビオンセンサーのような三層センサーではないか?とも思える。もちろんベイヤー機でも美しく撮れるが、デモザイクによって、何かが失われているような気がしてならない。
ともかく撮影して見てみることにする。


ベイヤー

以下の写真以降の作例はクリックで等倍鑑賞可

K_1N1573_DxO.jpg
PENTAX K-1 / Auto-Takumar 55mm F2 (F2)

まずは、解放F2の撮影。
ラーメン屋の中での撮影だが、以降のTakumarとは異なり、青みのある絵となる。中心付近の解像は、解放から立派で、なかなかの高性能だ。ボケも綺麗だと思う。



K_1N1562.jpg
PENTAX K-1 / Auto-Takumar 55mm F2 (F4)

店の外で撮影。
夜だが、F4にも絞れば、周辺もまずまず解像する。雰囲気は非常に良い感じだ。



フォビオン

SDQH0727.jpg
SIGMA SD Quattro H / Auto-Takumar 55mm F2 (F8)

光の入射角の問題か、左側が変色しているようにも見える。このあたりはフォビオンセンサーなので仕方がないが、他の標準レンズであれば、そうならなかった可能性がある。しかし、フォビオンのブルー描写とこのレンズのブルー描写は、けっこう綺麗な色を演出していると思う。このレンズがどういう描写をするのかも分かりやすい。


SDQH0733.jpg
SIGMA SD Quattro H / Auto-Takumar 55mm F2 (F8)

逆光での撮影だが、意外に良い。というか、この写真だけを見れば優秀に見える。AUTO YASHINON 5cm F2 のほうは、こういう逆光はぜんぜんダメなので、こちらはPENTAXの要望もあったのかもしれないと思ってしまう。PENTAXのオールドレンズは、比較して非常に逆光に強い傾向があるからだ。
ハイライトが分離してしまっているのは、フォビオンの特性なので、このレンズによるものではない。


モノクロ

MONO1489.jpg
PENTAX K-3 Mark III Monochrome / Auto-Takumar 55mm F2 (F8)

やはり、モノクロは良い感じに写る。なんというか、このレンズは諧調的な部分で、滑らかという感じがする。他ではこのようになった事が無い気がする。


MONO1501.jpg
PENTAX K-3 Mark III Monochrome / Auto-Takumar 55mm F2 (F2.8)

日が暮れた後の様子だが、諧調が非常に綺麗だ。暗部も非常に綺麗に諧調が残っている。


感想

SDQH0722.jpg
SIGMA SD Quattro H / Auto-Takumar 55mm F2 (F8)

やはり、このレンズは絵的に優れていると思った。周辺は、予想通り、以降のTakumarに劣るが、それ以上に絵的に説得力がある。あと、エモさもあり、そういうものを求めている人にも良い選択かもしれない。色に関しては、個人的には特筆する良さがあると思う。青みがかかっているが、ただの寒色ではなく、暖色も綺麗に写る。このあたりの良さが、このレンズの評価を高めているのかもしれない。個人的には、手放せないレンズの一つになっている。

2017年ごろまでアニメーション等の映像作家 その過酷さから病気に倒れ、限界を感じた事から、その後写真作家に転身 イメージフォーラム・フェスティバル、バンクーバー国際映画祭、オーバーハウゼン国際短編映画際、タンペレ映画祭、キヤノン写真新世紀 LensCulture 等で発表。 写真関連は、初の写真作品で、キヤノン写真新世紀2019年度グランプリ受賞。東京都写真美術館で個展、LensCulture Art Photography Awards 2022 LensCulture Emerging Talent Awards 2023 にて Jurors’ Picksなど NHK ドキュメント20min.「蟻(あり)と人間とぼく アーティスト・中村智道」で紹介される 尚、写真等の無断使用はお断りいたします。一言ご連絡ください。 お仕事のご相談など、気楽に、ご連絡ください。 e_mail:nakamura.tomomichi@gmail.com

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