Sankyo Koki KOMURA- 300mm F5
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Sankyo Koki KOMURA- 300mm F5 というレンズ
手を出すまい出すまいと思っていた、三協光機のコムラーレンズ。他のレンズのデータを調べていると、このメーカーはけっこう出てくる。海外のサイトだと、けっこう評価の高いレンズも多く、気になってはいたものの、レンズが増えてしまっても置き場に困るので、特に、オールドレンズの望遠と広角レンズに関しては、「どうせ大したことはない」と自分に言い聞かせていた。そして、三協光機が製造していたレンズの多くは、望遠と広角である。
しかし、残念な事に、好奇心に勝てなかった・・
三協光機だが、このメーカは、今は既に無く、80年代初期に倒産している。どういうメーカーだったかについては、調べてもらうと分かると思うが、今で言う、タムロンやシグマのようなレンズメーカーだ。というか、当時、そのライバルのサードパーティーメーカーだった。当時、サードパーティーらしく、純正に対して安価で、中判、大判レンズの評価は、特に高かったようだ。中にはプレミアのついているレンズもあるが、ぼくが探すのは、だいたいその逆、数が多くて安いか、微妙なので安いかのどちらかにとどめておいている。
このメーカー、今でも残っていてほしかったと思う人はけっこういるのではないだろうか?
いたって、シンプルな光学図だ。一つ疑問に思うのは、メーカー記載の光学図のレンズの要素が4つということだ。分解してみたが、合わせレンズが前後に二つと、もう一枚のレンズがあったので、5枚あることになる。一つは、ただのプロテクターの類だろうか?KOMURAのレンズは分解も容易で、メンテナンス性は非常に良い部類だと思う。
このレンズ、基本がL39マウントであり、Leica Visoflex I (ライカビゾフレックス1型)用のフランジバックを持っている。そのため、非常にフランジバックが長く、各メーカー用のマウントアダプターを付けるということになる。当時は一眼レフ用のアダプターとなるが、それでもミラーレス用のように長い。それぞれは付け替える事が可能で、一つマウントアダプターを持っていれば、そのマウントのカメラでの使用が可能だ。
上記のレンズが、同様のマウントアダプターでの使用が可能なので、L39マウントを見て、M42マウントだと勘違いして購入してしまった人も、このシリーズの他のレンズにアダプターが付いていれば使用することができる。
この当時のレンズは金属製で、だいたいビルド品質は高いが、このレンズに関してもそれは変わらない。質感に関しては、何か他のメーカーの黒とは印象が違いうという感じで、何が違うのか分からないが、なんとなく強そうに見える。あと、手抜きが無く、絞り羽は16枚もあり、絞っても綺麗な円形を保っている。
ところで、このレンズのスペックである、F5という絞り解放値だが、微妙だと思う。5.6でも6.3でもなく、5。この当時の技術を考えると、こういった望遠レンズは、無理して5.6、無難に高画質を維持しようと思ったら、6.3ぐらいが妥当だと思う。そういった意味では、画質に期待を持てない。そこを裏切ってほしいものだが、そもそも、こういったオールドレンズの超望遠に関しては画質が微妙なものが多いのは事実だ。
この個体だが、けっこうなカビ玉だった。あとバルサム切れも起こしていたので、そこは処理をしたが、問題は前玉だ。クモっているわけではないが、合わせレンズの中に小さなカビがある。どうやってここにカビが生息したのかが分からないのだが、横から伝わったわけでもなく、いきなり中にあるので、封じ込めていると考えるべきか、それでもバルサム剥離するべきなのか・・この態度で写りに影響が無い事は承知だが、カビとなると気になって仕方がない。いっそのこと、バルサム切れでもしてくれていたら処置をしようかという気分にもなるが・・
何はともあれ、撮らないと何も分からない
さて、入手前から微妙とか思っていたものの、良い意味で予想を外すことだってあり得る。当時の技術でも、ハマれば高画質に写るはずだ。あと、今のところ未経験のコムラーレンズである。しかし、一度分解したから分かるが、合わせレンズ二枚入りの3群5枚レンズで、収差などどうなるのだろうか・・
開放
これ以降の作例は、クリックで等倍鑑賞可能
絞り開放など使わないし、期待もしていないが、おそらくはブログをたまたま見た人は気になるであろう。
正直申し上げると、予想通りの画質で、キレも無く、解像もしていない。この感じは、安い中華レンズにも通じるものがある。ただ、全体としては絵になっているという感じなので、使いようではあるかもしれない。開放は、実際には、これはピント合わせ用で、ミラーレス機では、その意味すらないという感じだろう。
気を取り直して、遠景を絞って撮る
!!フィルム写真のような感じで撮れた。相変わらずキレがあるとも、コントラストが高いとも言えない画質だが、良い意味で、期待を裏切る程度にはなんとかなっている。当時のレンズだが、200mmまでは、なんとか絵になっている感じで、300mmを使いたいならば、APS-Cで200mmを使ったほうが良いという感じすらあるが、これならばどちらでも良いという感じすらある。ただし、このレンズでそれが言えるのは、F8~F16までという感じかもしれない。
面白いと思えたのは、画像処理では再現しようのない絵柄が出てくることだろうか?200mmのレンズの多くは、もっと洗練されている感じで、悪く言えば、没個性的でもある。そういった意味では、こういう絵柄で撮れるレンズは持っていて損は無いという気がしてきた。
山のようなものの描写は、それほど得意でも無さそうだが、このレンズ、意外に収差が出にくいのではないだろうか?開放でのモワッと感も関係あるかもしれないが、昔の望遠特有のフリンジを抑える設計なのかな?とも思った。キレすぎると、収差が出るというのは、補正レンズの乏しいオールドレンズではありがちではある。
比較的近くのものを撮ってみたが、ある程度絞っていれば、大きな問題はない画質だ。ただし、このレンズ、逆光耐性は低いようで、白いものを撮っただけで、モワっとする傾向がある。ある程度絞れば、それも多少改善はするが、完全ではない。
細部を見て思うのは、このレンズ、F8よりもF11のほうが解像するようだ。
モノクロでも撮ってみる
モノクロ機で撮るとよく分かるが、白い(明るい)部分がにじんでいる。ただ明るいだけで、逆光のようなってしまうコーティングの弱さが伺える。この傾向は、ネットに上がっている、他の焦点距離の写真にも見られる感じで、KOMURAの特徴だろうか?ここは、カラー機の場合、デモザイクの後に色をまとめる処理があるため、逆に救われているところがあるようだ。あと、PENTAX K-3 Mark III Monochrome の画素ピッチだと、解像しきれずぼやけている。
感想
まだ1日しか使っていないが、光学性能が特別優れているわけではないが、絵的に好みではある。こういった感じで撮れるというのは大きい。
細部を見るならば、ツッコミどころ満載ではあるが、写真は全体感が重要と考えると、悪くはないと思った。
こういったレンズは万能ではなく、使いどころを選ぶのだろうが、個人的には、そもそも300mmという望遠を使う事はほとんど無いので無問題だ。むしろ、このレンズで、300mmも撮ろうかと思えれば幸いだと思った次第だ。