現像ソフト darktable で モノクロ専用機 PENTAX K-3 Mark III Monochrome の RAW画像編集
目次
darktable 4.6 から PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome に対応
先日、darktable 4.6 (ダークテーブル)をダウンロードしたところ、PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome の RAW が正常に動いたため、調べたところ、正式にサポートされたようだ。よって、通常の編集が可能となったので、どのように使うのか、簡単に説明することにした。
尚、同じくフリーのRAW現像ソフトである、RawTherapee も PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome や他のモノクロ専用機にも対応している。
モノクロ専用機のRAW画像編集について
ベイヤー機の PENTAX K-1 とモノクロ専用機 PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome
例えば、DNG形式のRAWであれば、編集できるRAW現像ソフトは多いと思うが、問題点としてあるのは、モノクロ画像にデモザイク処理が行われる可能性についての問題がある。デモザイク処理そのものは、ベイヤー方式のカラーセンサーに必要な処理であり、モノクロ専用のセンサーには必要の無いものだ。もちろん、純正のソフトであれば、その点に関してはクリアしているものと思われるが、社外のソフトについては、そうとも言えない。実のところ、最初から機能とし darktable 4.6 (現在最新)には、モノクロ編集機能がある。ただし、見た目の機能の一覧は、カラーと同じものなので、編集内容は、主に明暗、諧調などの編集機能、あとはローカル編集におけるそれらの編集ということになる。これにより、より作品向けの写真編集が行えることになる。
デモザイク処理について
モノクロセンサーには、カラーフィルターが無いため、デモザイク処理が必要ないが、一般的なRAW現像ソフトが、ニッチに対応していないことから、勝手にデモザイクされる可能性が高い。デモザイクされてしまうと、モノクロセンサー特有のシャープさや自然な諧調が損なわれる可能性が高い。塗り絵的になってしまうと言えば分かりやすいかもしれない。
ベイヤーセンサー
デモザイク処理を行っていない画像
一部を除く多くのデジカメでは、このようにカラーフィルターが配列された、ベイヤー方式が採用されている。そのため、デモザイク処理が行われていない画像を拡大してみると、このようになる。一つのフォトダイオードには、一つの色だけが割り当てられていて、赤:R 緑:G 青:B の三色を混合させて最終的な色を割り出すという方式だ。結果は、以下のようになる。
ベイヤーセンサーの画像をデモザイク処理無しでモノクロ変換するとこうなる
これを見ると、如何に色々な情報が損なわれているのか分かる。
デモザイク後の画像
デモザイク処理後は、このような画像になる。予測で色が割り当てられるため、偽色等の問題も発生する。もう一つの問題としてあるのは、モアレということになる。あと、混色の結果、少しもわっとするのも特徴だ。
モノクロセンサー
モノクロセンサーによる画像
モノクロセンサーの場合、1画素に適用される情報は、光の量だけなので、きわめてシンプルで、諧調豊かかつ、変にアンシャープマスクをかけられていないような、すっきりした画像が生成されることになる。両者の文字の輪郭部分の処理を確認していただきたい。あと、ベイヤーセンサーは、カラーマイクロレンズが1画素ごとに存在するため、光を30%程度しか通さないという問題があるが、モノクロセンサーにおいては、その問題が発生しない。
等倍写真比較
クリックで等倍鑑賞可能 PENTAX K-1 / SMC PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited / iso100 / F8 / 1/160秒 イエローフィルター装着
クリックで等倍鑑賞可能 PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome / SMC PENTAX-FA 50mm F1.4 / iso200 / F8 / 1/320秒 イエローフィルター装着
K-1 と K-3 MarkⅢ Monochrome は、センサーサイズが異なるため、レンズの焦点距離は換算値によるもので最も近いレンズにした。両レンズは、性能的にも異なると思われるが、F8に絞ったときの性能は近いので比較しやすいという判断だ。両カメラの基準の最低感度は異なるため、それも両方最低感度で合わせる事にした。K-3 MarkⅢ Monochrome は、カラーフィルター装着により、1段以上露光の下がった写真を想定するため、妥当だという考えだ。
画像は、両方、PENTAXの純正ソフト、Digital Camera Utility 5 により、無編集で出力した。
K-1 3600万画素、K-3 MarkⅢ Monochrome 2600万画素と、画素数も異なるが、それを差し引いても、K-3 MarkⅢ Monochromeの画像が多くの面で優れている。
実験
クリックで等倍鑑賞可
ベイヤー式のセンサーだと、4画素から一つの色が生成されるため、モヤっとするわけだが、それが無いモノクロ画像を1辺2倍、4倍の1億4百万画素に画素補完して拡大してみた。
では、モノクロセンサーによる問題は無いのか?
生で出る、モノクロ画像においては、モノクロセンサーが明らかに優れている。ただし便利かどうか?に関しては問題がある。K-1とK-3 MarkⅢ Monochrome の写真で付けられているカラーフィルターだが、ベイヤーセンサーには、カラーマイクロレンズがセンサーに装着されているため、RAWにはRGB情報がそもそもある。よって、疑似的に処理によってカラーフィルターを付けたような効果がボディー内或いは編集により、ソフト的に可能だが、モノクロセンサーではそれができない。つまり、フィルター効果を得ようとする場合は、フィルターをレンズに装着する必要が出てくる。モノクロ写真を撮るという点においても、ベイヤー機は便利にできている。
それでも、その不便さを差し引いても、純粋にモノクロ写真のクオリティーを上げたいと思うなら、モノクロ専用機を使うと良いだろう。
現像ソフト RawTherapee で、ベイヤー方式のモノクロ表現を考える
PENTAX K-3 Mark III Monochrome に関する感想
そちらは、以下に以下に書いているので参照いただきたい。
PENTAX K-3 Mark III Monochrome 雑感
darktable による RAW 現像
LUT 3D の設定
下準備となるが、darktable 用のフィルムシミュレーションのような機能についてだが、今回は、汎用性の高い HaldCLUT を Program Files 内の darktable フォルダ内に手動で設置する。
HaldCLUT:ダウンロード
darktable の設定から、処理、LUT 3Dのルートフォルダ から、先ほど置いた HaldCLUT フォルダを探し出し設定する。
デモザイク
darktable 4.6 では、デモザイクは使用不可となっている。既に、デモザイクはパススルーされている、つまり、モノクロセンサー専用の設定になっているということのようだ。
レンズ補正
darktable にもレンズ補正機能はある。ただし、プロファイルは Lensfun のみなので、あればラッキー程度に考えておけば良いだろう。
画像を開いてみる
ライトテーブル
既に、いくらか写真を撮っているので、ライトテーブル内のライブラリ内に、フォルダを追加する。そして選択すると、このような画面になる。この中の編集したい写真をダブルクリックするとダークルーム(編集モード)に移動される。
ダークルーム
PENTAX標準のPEFファイル(RAW)が開いた。少々眠い印象がある。
編集する
まずは基本タブから RAWブラック/ホワイトポイント を少々調整した。
続いて、トーンイコライザーで諧調を調整。
トーンタブから、トーンカーブ等、諧調に関する編集を中心的に行っていく。色が無いため、ほとんどそういった作業だ。
ローカルコントラスト等も編集していく。
マルチインスタンスのアクション
ここで、ローカルコントラストのインスタンスを増やそうと思う。上の矢印をクリックすると新たなローカルコントラストのインスタンスが作成される。darktable は、多くのインスタンスでこれが可能なのが特徴だ。
マスクの使用
描画マスクを選択し矢印の部分(ブラシを追加)をクリックする。
これによりブラシマスクが使用可能になる。クリックしながら線を引いたところには、スプラインが現れる。
上の矢印の部分をクリックすると、マスクがどのような状態になっているのか?を見る事ができる。下の矢印をクリックすると、スプラインを表示したり消したりする事ができる。
マスクは、このような状態になっているようだ。
スプラインは、矢印のようなポイントをクリックしながら移動など操作できる。ホイルを回すと、マスクの範囲が大きくなったり小さくなったりする。
マスク内のコントラストを落とした。遠景をより遠景らしくするためだ。絵画で言えば、空気遠近法的な考え方だ。
遠景のコントラストを落とした。ここからは、これまでの機能と、各パラメーターを操作して、詰めの編集を行う。
アクティブなモジュールのみ表示
アクティブなモジュールのみ表示 タブを選択すると、このように、現在アクティブなインスタンスが表示される。つまり、これだけの機能を使って編集したということだ。
LUT 3D
LUT 3D から、下準備で用意した、HaldCLUT を選択すると、このような画面が出てくる、この写真は、モノクロなので Black-and-White→Ilford を選択。
今回は、Ilford Delta 100 を選んだ。つまるところ、これは、RawTherapee で言えば、フィルムシミュレーションのような機能という事になる。今回は、ここでひとまず完成ということにする。
完成画像 感想
クリックで等倍鑑賞可 PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome / SMC PENTAX-FA 50mm F1.4
今回は、darktable 4.6 での編集となったが、個人的に、RawTherapee系のソフトに慣れているため、幾分使いにくいと思ったが、基本的な考え方は同じだ。画像を見てみると、きちんと編集できていたことが分かるのと、ホームページの対応カメラ一覧に、PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome が載っているのは大きい。darktable は、特にローカル編集機能とマルチインスタンス機能が強力なので、RawTherapee系とは差別化できると思う。あと、こちらに慣れている人には、やはりdarktableがおススメだ言えるだろう。
PENTAX K-3 MarkⅢ MonochromeLinux 環境という選択
うちの、Windows 環境では darktable 4.6 が重く不安定であり、そのため扱いにくい状態だったのだが、Linux 環境では非常に軽く安定していた。たまたまかもしれないが試してみる価値はあるかもしれない。
作例
以下の画像は、クリックで等倍鑑賞可能です。 すべて darktable による編集。
PENTAX K-3 MarkⅢ Monochrome / TAMRON SP AF 17-50mm F/2.8 XR Di II LD Aspherical [IF] (Model A16)
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