RawTherapee 5.9 感想
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RawTherapee 5.9
2020年2月ごろからずっとRawTherapeeは5.8のまま更新されず、このソフトはもう終わったのか?とも思っていましたが、一月半ほど前にバージョン5.9がリリースされました。長年このフリーソフトを使ってはいたものの、このソフトにはローカル編集が無く、多機能ながら、出来ることに関して、他のソフトよりも制限がありました。その問題点を解消したのが、派生ソフトであるARTでしたが、ローカル編集が充実した事と引き換えに、他の機能はかなり省かれていました。そんな感じなので、本家の更新は嬉しい限りです。ただ、バージョンは5.9なので、マイナーチェンジモデルということになるのでしょうか?
とりあえず、使用してみた感想でも書いてみようかと思います。
使用する
現状、特にRAW現像ソフトに苦労していないにせよ、常に可能性は見ておきたいので、フリーソフトに何らかの変更があった場合は、とにかく使ってみるということをしています。使えなくても無料なので、時間を浪費してしまったという点以外は大きなダメージもありませんし、色々な理解を深める上では、必要な時間でもあります。
RawTherapeeは、最初に使い始めたRAW現像ソフトで、何年も使用しています。このソフトは、そもそも実験的なソフトで、他のソフトでは見慣れないような機能も満載しており、特に細かな設定を覚えれば、下手な商用ソフトでは不可能なぐらい緻密な写真を作成できます。
DxO PhotoLab 6 でDNGファイルを描きだす
今回は、かなり条件の悪い画像を取り扱うことにしました。というのも、ある程度綺麗な画像は、何をしなくても綺麗なわけで、特にカメラの苦手な条件も取り込まれていないことから、色々と判断しにくいところがあります。
PENTAX 645Dは、中判ながら、CCD撮像素子を搭載した古いデジカメで、それでも現代に通用する4000万画素の緻密な絵を吐き出す事から重宝しております。ただ、今やこのCCDというものが曲者で、低感度では今でも無双するような画像を出すものの、少し感度を上げるとか、低感度でも暗部がまったく駄目とか、使用する上では難しいところも出てきました。センサーが大きいから大丈夫と思われる方もいるかもしれませんが、正直今のAPS-Cセンサーのほうが、感度もダイナミックレンジも圧倒していると思います。
そこで、ある程度ノイズリダクションをするという意味で、事前にそれが得意なソフトである、DxO PhotoLab で、ノイズリダクションされたDNGファイルを描きだします。このソフトの、バージョン6からは、DeepPRIME XDというノイズリダクション機能が加わり、かなりの暗部でも緻密な描写が可能になりました。他のソフトとの連携がしやすく、レンズ補正も優秀な事もあって、個人的には、最強のサブツールだと思います。
この写真に関してですが、この状況で、無謀にも手持ち撮影です。荷物が限られる中では、どうしてもそういう状況が生まれます。
環境設定
まず最初にやっておきたい事は、写真を描きだす画像処理ソフトを決めておくということでしょうか?これは、ARTなどとやり方は同じです。
フィルムシミュレーション(HaldCLUT)
画像を取り込む
DxO PhotoLab 6 で、光学補正とノイズリダクションだけを使用して描きだされた画像はこんな感じでした。そもそも画像そのものがゲインされているようで、そういうものを取り払うとこのようになるようです。いよいよ条件としては厳しそうです。ただ、やりがいはありますね。
RawTherapee 5.9 で、処理を始める
暗すぎて画像が見にくいので、少しばかり露出を上げてみました。
カラーマネージメントでDCPプロファイルを適用する
ここも、ARTと同じです。
RawTherapeeは、アドビのDCPプロファイルが、普通に使用できます。
取得の方法は、以下のページに記載されていますので、参照ください。
レンズプロファイル (LCPプロファイル)
ここも、ART と同じです。
LCPプロファイル、つまりレンズプロファイルも普通に使えますし、DCPプロファイル同様、ものすごく多くの機種に対応可能です。入手の方法はDCPプロファイルと同様です。
更に、Lensfunのプロファイルも標準で搭載されているため、LCPプロファイルには無い、古いレンズのプロファイルも存在します。昔のRAW撮影可能なコンデジなどのプロファイルもあったりするので、非常に助かります。
取得方法は以下を参照ください。
ローカル編集を始める
今回は、このページで扱うケースのみのローカル編集の説明をします。というのも、いざ扱うとなると、やり方は書ききれないほどあると思います。
各説明は、以下を参照ください。
RawwPedia
RT-スポットを追加する
まず、ローカル編集を起動し、作成/追加をクリックすると、上の画像のような楕円が現れます。RT-スポットと呼ぶようです。これ自体は、他のソフトでもあるような、部分補正用のマスクのようなものと考えてください。
RT-スポットの形状を変える
「すべての設定項目を表示」にチェックを入れると、スポットの形状に、「長方形」が現れるので、これを選択します。
RT-スポットを拡大し、機能を割り当てる
この写真は、あまりにも地面の部分だけが暗いので、ここを少々見えるようにしたいと思います。
RT-スポットの部分を拡大し、地面の暗い部分を取り囲めるようにします。
現在のスポットに、機能を追加というタブがありますので、これをクリックして、ここから明るさに関する項目を選択すると、「色と明るさ」や「シャドウ/ハイライト&トーンイコライザ」や「ダイナミックレンジ&露光補正」などの明るさを調整する機能を選択できます。これらを駆使して、上手く調整してみましょう。
ΔEのプレビュー
ここで、「ΔEのプレビュー」というタブをクリックしてみると、このように表示されます。緑がかった部分は、RT-スポット内で機能の効果がある部分を表しています。このままだと、空の境目に線が入ったような処理になる可能性がありそうです。
「カラー機能のスコープ」のスライダーを動かすと調整できます。こうすることで、地面だけ編集することが可能になりました。
ここからの編集は、通常の編集と似てますので、基本機能から使えば、なんとなく使うことはできるでしょう。
もっと高度な設定も可能ですが、そこは慣れてからでも良いかもしれません。かなり多くの機能があります。
マスク内の画像処理と全体の画像処理、フィルムシミュレーションの適用
ここからは、通常の編集と同じです。多くを望まない場合、RawTherapee は、直観的な作業ができるようになっていると思いますので、他の現像ソフトを使用されている方ならば、なんとなく分かると思います。
今回の画像は、少々暗すぎたため、あまり持ち上げると破綻することが分かりました。
作例
これらの画像は、クリックで等倍鑑賞可能です。
RawTherapee 5.9 感想
個人的には、RawTherapee 5.9 に関しては、2年以上ぶりの更新ということを考えれば、物足りない進化という感じです。というのも、目玉であるローカル編集が、まだ不完全で扱いにくいという印象からです。RT-スポットにブラシタイプとグラデーションタイプがあれば、もっと使いやすかった事は、間違いのない事でしょう。ただ、RT-スポット内の機能を使えば、グラデーション的な処理は、可能と言えば可能でした。あとはブラシ的なものでしょうね。
機能的には、豊富すぎるぐらい豊富で、何を使えば良いのか迷うレベルです。ただ、慣れてくると、自分が使う機能と、使わない機能というものは分かってくると思いますので、言われるように、とっつきにくいソフトという感じでもないと思います。
現状、似たソフトであるARTが存在しますが、ブラシマスクとグラデーションマスク的なものが搭載されるまでは、そちらをメインで使うと思います。ただ、それらが搭載されたときは、すべての機能でARTを凌駕することになると思いますので、本家のこちらを使いたいと思っています。とはいえ、ARTは、RawTherapee を一般でも使いやすい仕様にしたソフトだと思いますので、見た目からも好まれるかもしれません。そういう意味では、使い分けという感じでしょうか?
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